平安時代から盛んになった熊野詣。
各地から熊野三山へと続くかつての参詣道は熊野古道として知られています。
熊野古道の中辺路と大辺路の分岐点にあり、口熊野と呼ばれたかみとんだには、三つの王子跡が点在し、なかでも、世界遺産登録を目指している八上王子跡と稲葉根王子跡が人気のスポットになっています。 周辺の見どころとともに、古道の面影を富田川沿いにたどってみましょう。

標準歩行時間:1時間10分(稲羽根トンネル経由)
- 八上王子跡 スタート
- ▼0.7㎞/徒歩10分
- 田中神社
- ▼徒歩すぐ
- 大賀ハス田
- ▼稲葉根トンネルルート 1.7㎞/徒歩25分
▼旧国道311号ルート 1.9㎞/徒歩30分
▼王子谷越えルート 1.6㎞/徒歩30分 - 稲葉根王子跡
- ▼1.3㎞/徒歩20分
- 畑山橋(潜水橋)
- ▼1.0㎞/徒歩15分
- 興禅寺
- ▼1.5㎞/徒歩25分
- 一瀬王子跡
八上王子跡~一瀬王子跡
◉やがみおうじあと~いちのせおうじあと
聖なる川とされた富田川に沿うように熊野古道が続きます

地元の産土神として崇められる八上神社がかつての八上王子です。
ここから、かみとんだの熊野古道ウォークをスタートするのがおすすめです。平坦な道を少し歩くと、南紀熊野ジオパークのジオサイトにも認定された田中神社の森が見えます。神社裏手には大賀ハスが植栽されたハス田があり、夏の花の季節は必見です。田中神社から世界遺産の稲葉根王子跡までは、王子谷越え、稲葉根トンネル、旧311号の3つのルートがあります。王子谷越えルートは最短ですが、道が荒れている場所もあり注意が必要です。稲葉根王子跡向かいの富田川畔にある稲葉根公園には、水垢離場跡があります。みそぎの川として名高かった富田川は、足をひたせばさまざまな悪業も悩みも消えると信じられていました。
稲葉根王子跡からは畑山橋(潜水橋)を渡り、山沿いを歩けばゴールの一瀬王子跡に着きます。
興禅寺(だるま寺)
◉こうぜんじ(だるまでら)

創建は1200年前にさかのぼるとされる古刹です。豊臣秀吉の紀州征伐で焼失しましたが、江戸時代に再興されました。熊野古道の一瀬王子跡近くにあり、境内隣接地に建立された日本一の白いだるま坐像が名高く、だるま寺の通称で親しまれています。町指定文化財の聖観世音菩薩立像や「興禅寺文書」と呼ばれる古文書百点余など、文化財も数多く所蔵しています。また、江戸時代に定められた、近西国三十三所南紀霊場の15番札所で、ツツジやアジサイ、シャクナゲ、紅葉に彩られる回遊式庭園も見事です。また、「水琴窟(すいきんくつ)」の音色は、癒しの音として親しまれています。
日本一の白いだるま坐像は1973年に建立されました。
八上王子跡(八上神社)
◉やがみおうじ
12世紀初めに創建されたとされる、熊野九十九王子の一つです。歌人西行が歌を詠んだ地として有名で、境内の社殿横には歌碑が2基建てられています。国指定史跡。
(熊野参詣道・南方曼陀羅の風景地)境内には西行法師の山家集にちなむ西行歌碑が建てられています。
注目ポイント!
西行の和歌
「待ち来つる八上の桜咲きにけり あらくおろすな みすの山風」(『山家集』)。熊野詣に向かった西行が八上王子で詠みました。
大賀ハス
◉おおがハス
田中神社裏手のハス田では、2000年の眠りから目覚めた古代ハスの花が観賞できます。
田中神社
◉たなかじんじゃ
ジオサイトにも認定された岡川沿いの古社です。かつては現在地より6kmほど上流にありましたが、大水で森ごと流されてきたと伝わっています。国指定史跡(南方曼陀羅の風景地)
稲葉根王子跡
◉いなばねおうじ
熊野九十九王子のなかでも重要な王子とされる五躰王子の一つです。藤原定家の『後鳥羽院熊野御幸記』には、ここに馬を預けて石田川(富田川)を渡り、一瀬王子に詣ったと記されています。国指定史跡。(熊野参詣道)
注目ポイント!
五躰王子
◉ごたいおうじ
熊野三山から勧請した五所王子(若一王子・禅師宮・聖宮・児宮・子守宮)を祀ったと伝わり、稲葉根王子のほか、藤白・切目・滝尻・発心門王子が五躰王子とされます。